『アナ雪』主題歌Let It Goのグローバルな音楽制作を影で支えたFinale

エルサが25もの言語で歌うLet It Go in 25 Languagesビデオを観る

本記事では、Finaleを愛用し幅広い作品を手掛けている、オーケストレーター/アレンジャーのジェイソン・ポス(Jason Poss)氏と、コンポーザーのダニタNGポス(Danita Ng-Poss)氏の楽譜作成についてご紹介します。

ジェイソン・ポス氏は、「アナと雪の女王」の主題歌であるLet It Goの多言語バージョン全ての元となったメロディの譜面を、Finaleを用いて制作しました。世界的なヒット作品でも翻訳されるのは数言語程度と思われがちですが、驚くべきことに本作品は41もの言語に翻訳され、そのうちの25言語では主題歌Let It Goの歌詞も翻訳され、現地語でレコーディングされました。その収録現場で使用されたのが、この譜面だったのです。

エルサが25種類の言語でレット・イット・ゴーを歌う「Let It Go in 25 Languages」ビデオをディズニーが公開していますので、ご覧ください。このグローバル作品の音楽制作を影で支えているのがFinaleなのです。

[エルサが25の言語で歌うLet It Go in 25 Languagesビデオを観る]


「アナと雪の女王」の主題歌であるLet It Goの採譜を担当されたそうですが 指揮をするジェイソン・ポス氏

<ジェイソン>:私はフリーランスとしてDCVI(ディズニー・キャラクター・ボイス・インターナショナル)の仕事もしています。DCVIはディズニー作品を多言語に翻訳する業務を統括する部門で、映画だけでなく、テレビ番組、ショー、テーマパークのアトラクション、そして音楽の歌詞までも対象としています。

私の仕事は、歌詞を多言語化するために、楽曲のボーカル部分(リード・ボーカルのメロディ、バックコーラスのメロディなど全て)を採譜することです。作曲時の楽譜で十分だと思われるかもしれませんが、そもそも、映画音楽では作曲の時点で完全な楽譜を作らないことが多いのです。それは、録音時にアレンジの変更や即興が採用される場合があるからです。また、映像の変更によりアレンジの再構成が必要な場合もあれば、曲自体を書き直す、または部分的に再度録音することまであるのです。ですから、映画においては、最初に完全な楽譜を作ることの意味があまりないのです。

私が採譜するのは完成テイクのボーカル部分で、Finaleで採譜し作成した楽譜を世界中のスタジオへ配布します。各国の翻訳者はその楽譜を元に翻訳して、それを歌手や吹き替え版の役者が再度ボーカル録音するわけです。私はこれまで数々の作品に関わってきましたが、一流の映画作品でも翻訳されるのは数種類の主要言語だけだと思っていました。しかし、驚くべきことに「アナと雪の女王」は41もの言語に翻訳され、しかもそのうちの25言語が主題歌/挿入歌の歌詞まで翻訳して再度ボーカル録音されているのです。

DCVIは、「アナと雪の女王」の主題歌「レット・イット・ゴー」を題材に、私達の仕事がよくわかるデモビデオ「Let It Go in 25 Languages」を制作し公開しています。これは、エルサが英語で主題歌を歌っている映像に、25の言語で録音された各国のボーカル音声を次々と切替ていくものです。このビデオでは、オリジナルである英語版の映像にぴったり当てはまるように、採譜が如何に正確でなければならないかを示すと同時に、音声をマッチさせるためにディズニーがどれだけ努力しているのかも示しています。このボーカル・パフォーマンスは本当に凄いものですよ。皆さんにも是非観て頂きたいですね。


お二人がフィナーレで気に入っているポイントを教えてください ダニタNGポス氏

<ダニタ>:私はフィナーレで、楽譜のとても細かい部分まで調整できる点が特に気に入っています。テンプレートを作る際、思い通りに符頭の大きさや五線の間隔、デフォルトのフォントなど、あらゆるものを変更してきました。これらのノウハウの多くは、手書きの時代からハリウッドで働いている経験豊富なコピースト(訳注:特にハリウッドで生演奏用のパート譜の作成を担う職種)から学んだものです。彼らは楽譜作成について、非常にユニークな考えを持っていますね。

でも、本当に小さな変更を加えるために、何をしなければならないかを見つけるのは困難です。そんな時には、楽譜作成の発想を「フィナーレ的な見方」に転換する必要があります。ミュージシャンの中にはそういうことが苦手な人もいますけど、フィナーレはこの5年位で、さらに使いやすくなったと思います。今でもコピースト達と一緒に仕事をしていますが、フィナーレと格闘している人はかなり減ったと思います(笑)。画面を見てどこをクリックすれば自分のやりたいことができるのかが、分かり易くなりましたからね。

<ジェイソン>:もし「手書きをしていた時はこんな書き方はしなかった」と言う人がいたら、彼らがどうしたいのかに耳を傾け、フィナーレを使ってそれをどうやって再現できるのかを考えます。大抵、フィナーレによって良い方法を見つけることができます。他の楽譜作成ソフトウェアではこうはいきませんよ。


お二人がフィナーレで気に入っているポイントを教えてください

<ダニタ>:キーボードのショート・カットやメタ・ツールを覚えることですね。もし可能ならば自分でプログラムして、頻繁に使う機能はマクロ・プログラムを組んで自動化するのが良いと思います。何度も同じ作業をしなければいけない時も多いでしょうし、マウスでメニューを往復するより時間節約に絶大な効果が期待できますから。

<ジェイソン>:自分用のテンプレートを作ることです。頻繁に使う記号や五線、フォント、間隔などをテンプレートにしておけば、楽譜を書く度に設定をしなくて済みますからね。基本的なテンプレートが完成したら、それを元にしてプロジェクト専用の特別なテンプレートを作っていくのが良いと思います。


お二人と同じ様な仕事をしたいと思っている音楽家への助言があれば

<ダニタ>:私の友人の作曲家は、紙の上に音楽を書くというのは芸術の一形態だと言っていました。楽譜はそれを見たとき、何らかの音楽的な感覚が感じられるものでなければなりません。そうすることで演奏家は目の前に置かれた紙から音楽を創造することができるのです。楽譜が良く書けていると演奏も良くなりますしね。

<ジェイソン>:本当にそうです!楽譜は本来、奏でている様に見えなければならない。それには、何年もの月日が必要かもしれませんが、演奏家が楽譜を読むことの意味を、楽譜を作成する人は深く理解する必要があるのです。

<ダニタ>:シーケンサーや楽譜作成ソフトウェアでプリントすれば仕事が終わると考えている音楽家も多いですが、私達はそう考えていません。悲しいことに、良くない楽譜作成の現場に遭遇することがあるのですが、それは、適切なパート譜や総譜を作成することの重要性を理解していないからだと思いますね。

 そして、アートを敬意し、どうすれば良いものを生み出せるかについて学ぶことに時間をかけることです。あと、プルーフリーダー(楽譜に間違がないかをチェックする人)を頼むと良いです。間違いは誰にでもありますし、保険のようなものです。多くの人がプルーフリーダーに依頼することを考えていないのですが、もし間違って進んでしまったことから発生する莫大なコストを考えれば、とても安いものです。現場に楽譜を持ち込む前に全てを整然と準備しておくことは重要なことです。その楽譜に自分の評判が掛かっていると思って仕事に取り組むべきですね。

<参考>
この記事は、米国finale BLOG記事Finale and Transcription Work(英語)を翻訳し構成しています。


 

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《プロのFinale活用事例:アーティスト別》

  • チャラン・ポ・ランタン小春氏:アコーディオン奏者 “Finaleが便利だと感じるのは「移調楽器を実音で表示」の機能です。全部Key:Cで書いてから、ワンタッチで楽器別の移調譜にしてくれますよね。これは手書きではできません”
  • 都倉 俊一氏:作曲家/編曲家/プロデューサー “現場ではすぐにスコアを書き換えなくてはいけないことがある。するとパート譜の修正もたくさん必要になりますよね。その作業が、Finaleのおかげでとっても楽になったことが印象的でした”
  • 外山和彦氏:作編曲家 “手書き時代はスコアを切り貼りしたり苦労をしたものですが、Finaleを使うことで圧倒的に便利になりましたね。仕事場にはもう五線紙がありませんよ”
  • 吉松 隆氏:作曲家 “我々プロの作曲家にとっては、こと細かい調整ができるという面で、やっぱりFinaleなんですよね。Finaleは、車に例えるとマニュアル車みたいなものなんです”
  • 佐久間 あすか氏:ピアニスト/作曲家/音楽教育家 “Finaleは楽譜のルールを学習するためのツールにもなっているんだなと思います。楽譜が分かるようになれば、読む時の意識も変わります”
  • 栗山 和樹氏:作編曲家/国立音楽大学教授 “Finaleを使えば「バージョン2」を簡単に作れることは大きなメリットですね。特に作曲面でトライ&エラーを繰り返すような実験授業では、Finaleでデータ化されている素材は必須です”
  • 櫻井 哲夫氏:ベーシスト/作曲家/プロデューサー/音楽教育家 “Finaleの普及で、演奏現場では以前は当然だった殴り書きのような譜面はほとんど見られなくなり、「これ何の音?」などと余計な時間も取られず、譜面に対するストレスがかなり減りました”
  • 紗理氏:ジャズ・シンガー “ヴォーカルだと特に、同じ曲でもその日の気分やライブの演出によって、キーを変えたい時がよくあるんです。そんな時でもクリックひとつで移調できるわけですから、これはものすごく便利です”
  • 赤塚 謙一氏:ジャズ・トランペット奏者、作編曲家 “作る人によってレイアウト、線の太さ、フォントの選び方など好みがあり、手書きのように作った人の「らしさ」が表れます。この辺がFinaleに残されたアナログな良さかも知れません”
  • 本田 雅人氏:プロデューサー/作曲家/サックス奏者 “手書きでは本当に大変でしたけど、Finaleに慣れてきてからは随分と楽になって作業の効率は圧倒的に良くなりましたね。ビッグバンドとか吹奏楽とか、編成の大きな場合にはすごく助かります”

《プロのFinale活用事例:テーマ別》

《楽譜作成ソフトウェアの導入メリットを考える》

《Finaleの基本操作を学べるリソース》

  • 譜例で操作方法を検索:Finaleオンライン・ユーザーマニュアルより。Finaleで可能なこと、それを行うための操作法が一目で分かり、初心者の方には特にお勧めです。
  • クイック・レッスン・ムービー:Finaleの操作方法や便利な機能などを30〜60秒程度の短い映像でご紹介しています。

 

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