第7回:赤塚 謙一さん

 

Finaleで作られた楽譜にも「らしさ」が表れる

赤塚 謙一
赤塚 謙一(あかつか・けんいち)プロフィール

(ジャズ・トランペット奏者、作編曲家)

北海道出身。トランペッター、作・編曲家。AKBB (Akatsuka Kenichi Big Band) 主催。国立音楽大学トランペット専修卒業。ジャズコース第一期生。「山下洋輔賞 」受賞。2009年4月、AKBB (Akatsuka Kenichi Big Band)を結成、翌年ジブリのカバーアルバム、AKBB「ビッグバンド☆ジブリ」 (P-Vine Records)を発表。演奏活動を行いながら、ポップスやアニメなど、親しみやすい曲をビッグバンド編成にアレンジし多数出版、指導やコラボ演奏活動にも力を注いでいる。

参加バンド:Gentle Forest Jazz Band、竹内直Old & New Dream Jazz Orchestra、SILKY BULLETS、水岡のぶゆきグループなど

参加楽曲:『バイキングMORE』テーマソング「Jasmine」/ sumika
「Present」「Get a Feel」/ 星野源
アルバム「Dear Mr. SINATRA」/ TOKU など

Twitter↓
https://twitter.com/kench_akatsuka


Finaleとの出会いは? 赤塚さん作成の楽譜

国立音大にメディアセンターという施設があるのですが、1年生の時にそこで「Finaleで『かえるの歌』を入力してみよう」といった内容の授業があったんですね。それがFinaleとの出会いでした。その後、編曲法の授業で「『赤とんぼ』を自由にアレンジする」という課題があって、僕はビッグバンド用にアレンジしたんです。メディアセンターにずっと籠ってFinaleと格闘してましたね。

大学ではFinaleの操作を学ぶための授業というのがあるのですか?

いいえ、そういった授業はかえるの歌の一、ニ度きりで、あとは自己流です。でもメディアセンターに居る先生や友人など、詳しい人が回りにいたので、色々質問しながら覚えていきました。

やはり、作る楽譜はジャズがほとんどですか?

そうですね。ほとんどジャズです。

それはライブで使う楽譜でしょうか? 出版社との打ち合わせ

もちろんライブで使う楽譜も作りますが、今は出版用の楽譜が多いですね。いくつかの出版社でビッグバンドのアレンジ譜を出版していただいていて、その原稿をFinaleで提出しています。ライブで使う楽譜は、最近ではトランペット×2、トロンボーン、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックスの6管編成の楽譜をよく作っています。この編成だとリードシートではなくて、きちんと全ての音を書いてパート譜まで作りますね。

出版する時は、赤塚さんがレイアウトしたデータをそのまま使うのですか?

出版社さんによりますね。あるところでは指定のテンプレートをいただいてそれに入力したり、自由に作ったものを提出して出版社側で清書してもらう場合もあります。完成形まで作り込む場合もありますが、いずれにしても出版クオリティまで仕上げていくのは大変ですよね。

手書きで楽譜を書くことは? 赤塚さん作成の楽譜

小さな編成でライブをやる時のリードシートを手書きで書いたこともありますが、今はほとんどすべてFinaleで書きますね。

Finaleで楽譜を書くメリットは?

やっぱり、手書きより早くて綺麗に出来上がることですよね、僕はとても字が汚いので…(笑)。それから、ビッグバンドのように編成が大きくて混み入ったアレンジになってくると、プレイバックで確認できるのはかなり助かります。

ところで、音大にはもともとクラシックを学ぶために入学したと伺いましたが?

そうですね、中学生の時に先生に「トランペットを習いたい」と相談したら、札幌交響楽団の先生を紹介いただいたのですが、初回の練習で先生から「音大に行きたいんだろ?」と訊かれて、よくわからずに「あ、はい…」みたいな(笑)。その時は純粋にトランペットが上手に吹けるようになりたいという一心だったのですが、いつの間にか音大への道を歩んでいました。ジャズに目覚めたのは、大学入学後にビッグバンドのサークル(NewTide Jazz Orchestra)に入部してからです。そして3年生の時にジャズコースが新設されてから、素晴らしい先生方のもと本格的にジャズの猛勉強をしました。

ジャズ・アレンジのテクニックも学校で学ばれたのですか?

もちろん学校では編曲法やジャズ・セオリーの授業も履修したのですが、やっぱり机上の勉強だけでは頭に入ってこないですからね…。とにかく何でもやってみて、音出しして、実践の積み重ねで体得していくというスタイルで身に付いたんだと思います。昔は、理論とか熟知していないと五線紙に向かうこともできなかったと思うのですが、Finaleのおかげで、やりながら理論も学んでいけるという点で曲作りのスタイルも変わってきているのでしょうね。かといって、理論を蔑ろにするのもいやなので、その分頑張らないとですけどね。

ライブやレコーディングなどの現場で渡される楽譜はコンピューターで作られたものが多いですか?

手書きはかなり少ないですね。僕の周りではだいたいの人が何かしら楽譜ソフトを持っていますので、今後ますます増えていくでしょうね。僕がトランペットのメンバーとしてやらせていただいているビッグバンドのリーダーで、ここ一、二年で手書きからFinaleに切り替えた方もいらっしゃいます。最近では、タブレットで楽譜を持ち歩いている人もいますが、僕はやっぱり紙の方が好きです。紙の方が扱いが楽ですし(笑)。

手書き楽譜がなくなってしまうのも寂しいですよね?

そうですね、アレンジャーによって特徴ある筆跡とかクセとかあってそれが面白いですし、代々受け継がれてきたような歴史あるものとか、サインが入っているとか、特別な気持ちになる楽譜もありますよね。でも、Finaleにもそういうところはあるんじゃないかと思います。作る人によってレイアウト、線の太さ、フォントの選び方とか好みがありますし、コンピューターで書かれていても見た目でその人が作ったとわかる場合もあります。とある老舗ビッグバンドの方が作る楽譜は五線が太くて昭和の男!という感じがしますし、ある人は音楽の内容も細かいのですが譜面にも繊細で華奢なラインで性格が出ます。あるホーンセクションの現場では譜めくりがが少なくて済むように1枚にまとめて見やすく、でもタイトルのフォントは曲に合わせていろいろなものを使っていて、仕事は真面目だけど楽しくやろうという性格が出ています(笑)。

「パート譜は愛だ」なんて言っていた知人がいましたけど、確かに読む人のことを考えて仕上げられた楽譜は吹きやすいですし、愛を感じます(笑)。手書きほどではないですが、Finaleで作られた楽譜にも作った人の「らしさ」が表れますよね。みなさんこだわりを持ってらっしゃるのではないでしょうか。この辺がFinaleに残されたアナログな部分かも知れません。誰が作っても全く同じになってしまったらつまらないかも。

Finaleにあったらいい機能はありますか? Finaleで作業中

記譜の機能については大満足です。ひとつだけ、ドラムのスラッシュ表記の上にガイドの音符を書くのがもっと簡単だとよいかなと思います。プレイバックの部分では、例えば印刷時は非表示だけどプレイバックはできる音符を簡単に書けたりとか、D.S.などの反復記号を置いただけで進行を自動判別して正しく演奏してくれるようになるといいですね。あとは、スマートフォンでもFinaleファイルが見れるようになるといいですね。携帯の画面を見ながら演奏することはないかもしれませんが、ファイルをメールでやり取りすることが多いですからね、出先でもその場で内容を確認できるようになったら最高です。スマートでカッコいいFinaleになっていってください!

最後に、Finaleユーザーの皆様にメッセージを

コンピューターやWEBサービスの進化のおかげで、何かを表現するということにおいて、プロもアマチュアも条件が同じになってきていますよね。それはもちろん面白い時代なんですが、自分の作ったものが誰かの感性、感覚に影響を与える可能性がある以上、世の中に提示していくものに責任を負わなきゃと思っています。僕もユーザーの皆さんに負けないようにどんどん良いものを作って発信していけるよう頑張ります!

【赤塚謙一さんの主な作品】

◆香取慎吾/東京SNG
6曲目:シンゴペーション (feat.Gentle Forest Jazz Band)
https://wmg.jp/shingo-katori/
香取慎吾、“タキシードが似合う音楽”をコンセプトに、2ndソロアルバム『東京SNG』を2022年4月13日に発売!

◆Gentle Forest Jazz Band / GENTLEMAN’s BAG
https://gfjb.jp/discography/gentlemans-bag/
1950年代のビッグバンド名盤に用いられた録音技術を研究し、9本のみのマイクによる一発録音で完成させたアルバム。ヴィンテージな要素を踏襲しつつ「今」のアイデアも盛り込んだ、これぞGentle Forest Jazz Bandが追い求める最高のビッグバンド・サウンドだ!!(モノラル録音)

◆AKBB『ビッグバンド☆ジブリ』
(P-Vine Records/PCD-20062)

1. カントリーロード
2. 君をのせて
3. 風の通り道
4. 海の見える街
5. ねこバス
6. アリエッティーズ・ソング
7. 風の谷のナウシカ
8. 崖の上のポニョ
9. ナウシカ・レクイエム
10. となりのトトロ

【AKBB(Akatsuka Kenichi Big Band)】
赤塚謙一 (tp,arr)
米田裕也、吉田誠次 (as)
鈴木悟、山本修平 (ts)
宮崎達也 (bs)
小澤篤士、田中一徳、田村嘉専、石村奈穂 (tp)
OTG(大田垣正信)、半田信英、島田直道、高本紘行 (tb)
堤博明 (gt)
挟間美帆 (pf)
内田義範 (ba)
山内陽一朗 (ds)

【guest】
羽毛田耕士 (arr/M2)、野口茜(arr/M7)
安川亜希 (vo)
熊本比呂志 (per)
ルドウィグ・ヌニェス (timb)

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関連記事リンク集

 

《プロのFinale活用事例:アーティスト別》

  • 都倉 俊一氏:作曲家/編曲家/プロデューサー “現場ではすぐにスコアを書き換えなくてはいけないことがある。するとパート譜の修正もたくさん必要になりますよね。その作業が、Finaleのおかげでとっても楽になったことが印象的でした”
  • 外山和彦氏:作編曲家 “手書き時代はスコアを切り貼りしたり苦労をしたものですが、Finaleを使うことで圧倒的に便利になりましたね。仕事場にはもう五線紙がありませんよ”
  • 吉松 隆氏:作曲家 “我々プロの作曲家にとっては、こと細かい調整ができるという面で、やっぱりFinaleなんですよね。Finaleは、車に例えるとマニュアル車みたいなものなんです”
  • 佐久間 あすか氏:ピアニスト/作曲家/音楽教育家 “Finaleは楽譜のルールを学習するためのツールにもなっているんだなと思います。楽譜が分かるようになれば、読む時の意識も変わります”
  • 栗山 和樹氏:作編曲家/国立音楽大学教授 “Finaleを使えば「バージョン2」を簡単に作れることは大きなメリットですね。特に作曲面でトライ&エラーを繰り返すような実験授業では、Finaleでデータ化されている素材は必須です”
  • 櫻井 哲夫氏:ベーシスト/作曲家/プロデューサー/音楽教育家 “Finaleの普及で、演奏現場では以前は当然だった殴り書きのような譜面はほとんど見られなくなり、「これ何の音?」などと余計な時間も取られず、譜面に対するストレスがかなり減りました”
  • 紗理氏:ジャズ・シンガー “ヴォーカルだと特に、同じ曲でもその日の気分やライブの演出によって、キーを変えたい時がよくあるんです。そんな時でもクリックひとつで移調できるわけですから、これはものすごく便利です”
  • 赤塚 謙一氏:ジャズ・トランペット奏者、作編曲家 “作る人によってレイアウト、線の太さ、フォントの選び方など好みがあり、手書きのように作った人の「らしさ」が表れます。この辺がFinaleに残されたアナログな良さかも知れません”
  • 本田 雅人氏:プロデューサー/作曲家/サックス奏者 “手書きでは本当に大変でしたけど、Finaleに慣れてきてからは随分と楽になって作業の効率は圧倒的に良くなりましたね。ビッグバンドとか吹奏楽とか、編成の大きな場合にはすごく助かります”

《プロのFinale活用事例:テーマ別》

《楽譜作成ソフトウェアの導入メリットを考える》

《Finaleの基本操作を学べるリソース》

  • 譜例で操作方法を検索:Finaleオンライン・ユーザーマニュアルより。Finaleで可能なこと、それを行うための操作法が一目で分かり、初心者の方には特にお勧めです。
  • クイック・レッスン・ムービー:Finaleの操作方法や便利な機能などを30〜60秒程度の短い映像でご紹介しています。

 

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